東海愛知新聞バックナンバー

 6月18日【日】

年内出荷目指す

幸田 “プラズマイチゴ”の実証実験
名大が結果報告 抗酸化物質が増

名古屋大学未来社会創造機構プラズマ医療科学国際イノベーションセンターの堀勝教授(59)と橋爪博司特任助教(45)はこのほど、幸田町内で昨年9月から今年3月までに実施した低温プラズマを使ったイチゴ栽培の実証実験の結果を同町役場で発表した。プラズマを使ったイチゴの実には老化の抑制効果があるとされる抗酸化物質の増加などがみられたと報告し、堀教授は「今回の成果は新しい農業技術として非常に有意義。今後はトマトやイチジクなどにも挑戦したい」と意気込みを語った。(横田沙貴)

プラズマ技術の農業応用を進めるための実験で、農業現場に近い環境で効果が表れたのは世界初。プラズマは原子から電子が離れ、物質が活性化したガスを含む気体のことで、実験では常温常圧で生成され、半導体の加工や殺菌滅菌などで広く利用される「低温プラズマ」を使った。

堀教授らはイチゴの苗の根元にプラズマを自動照射する装置と、乳酸を含む液体にプラズマを照射した「照射養液」を自動生成する装置を開発。町内のビニールハウスで2つの装置を使い、照射溶液の濃度や照射時間などを変えた19通りで苗にプラズマを与えながら栽培した。

収穫したイチゴの実は、抗酸化物質「アントシアニン」の量が、直接照射の場所で約25%、照射養液は濃度の低い場所で約40%、濃度の高い場所で約50%増えていた。また、プラズマを使用した苗は収穫量が約20%増加。特に照射養液を使った苗はほかより1週間早く収穫できた。酸味が抑えられ、まろやかな味わいという。人体に危害を与える物質の蓄積はなく、安全性も証明された。

堀教授は「プラズマ生成時に細胞を破壊する活性酸素などが発生する。これらの刺激に耐えるため、実に抗酸化物質が蓄積され、成長促進にもつながった」と仮説を立てた。

今年度も引き続き実験を行い、抗酸化物質蓄積や成長促進のメカニズム解明、より効果的な栽培手法の確立、プラズマ処理装置の最適化を進め、年内にプラズマを使ったイチゴの出荷を目指すという。同大は5月10日に低温プラズマ技術を用いたイチゴの生育法に関する特許を出願している。

大須賀一誠町長は「町としてもこのイチゴのブランド化を図りたい」と商品化に前向きな姿勢を見せた。