東海愛知新聞バックナンバー

 5月16日【火】

最新技術で生産性向上

岡崎の山口土木 ドローンなどを活用

国内の土木業界は近年、ICT(情報通信技術)を活用する動きが広がっており、昨年4月にはICTによる生産性向上を図る国の新基準「i―Construction(アイコン)」が発表された。既に新技術導入に乗り出していた山口土木(本社岡崎市東明大寺町、山田健一社長)。取締役統括技術部長の松尾泰晴さん(43)に、変わりゆく土木業界について話を聞いた。(大山智也)

建設現場でのICTの活用例は、測量、設計、施工、工程管理など幅広い業務に及ぶ。手作業が主流だった測量では、小型無人機「ドローン」による空撮や周囲の地形を読み取るレーザースキャナーで現場の詳細な地形データを収集。位置情報を含むデータを基に点描図を作成し、点描図から3Dの図面を起こすだけでなく、施工後には図面と完成物の誤差を手軽に確認することもできる。

重機に搭載するマシンコントロール(ガイダンス)システムは、データを入力することで一部作業を自動制御したり、現況とデータのずれをリアルタイムで確認できる。重機の周囲に補助役の人員を置く必要もないため、事故防止にも一役買う。

同社では、平成27年夏の道路新設工事から現場に導入。ドローンでの地形データの収集から、3Dデータ化、施工現場の土量の変化による進ちょく状況の数値化・可視化、マシンコントロールシステム搭載重機による切削作業、出来形管理まで活用場面は多岐にわたり、作業によっては従来の10分の1以下程度の労力に抑えるなど、生産性向上を実現させた。

「人の手ではできなかったことができるようになり、時間も手間もかかる作業が楽になる。アイデア次第で何でもできる」と松尾さん。もともと最新技術・機器に関心が高く、現場に導入することで業務の効率化を考えていたところ、ドローン世界シェア1位を誇るDJI社製のドローンを見て「これなら実用に耐えうる」と確信し、本格的な導入に乗り出した。

導入までは試行錯誤の連続で、現在も効率的な運用を追求しながら、新技術の発表会に参加して最新の情報を収集したり、先行事例として全国の勉強会で自社の取り組みを紹介したりと、現場以外での仕事が多いが「『面白い』が原動力。やりたいことが多すぎて困るくらい」と笑みを見せる。

また最新技術の導入は、土木業界で深刻化している人手不足の解消にもつながる可能性があるとし「今考えているのは、引きこもりの若者の取り込み。働き方が変わり、最低限のコミュニケーションで仕事ができる環境を用意すれば必ず活躍できる」と期待を寄せる。

松尾さんによると、新技術導入推進を目的とした土木業界の有志団体「YDN」(やんちゃな土木ネットワーク)も立ち上げられ、同社も含む全国の加盟事業所間で施工事例などの情報を共有したり、勉強会を開催したり、アイコン基準に対応したドローン航行アプリを開発したりして、新技術の導入をけん引。さらに外部企業などと協力し、VR(仮想現実)技術を活用して実寸大の3Dデータ上を“歩いて回る"ことができるソフトウェアの開発などにも挑戦している。

「産官学の垣根を越えて熱意ある人たちが立ち上がった土木業界は、これから必ず面白い業界になる。今までの枠を壊して、新しいことに挑戦する時期が来た」