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東海愛知新聞

ドクタージャズ特注ピアノ

出番待つ
要望した秋吉敏子さん演奏
10月4日・コロネット

 “ドクタージャズ”こと、外科医の内田修さんが1960年代後半に特注したグランドピアノ「ヤマハC3」が、10月4日に岡崎市シビックセンター・コロネットで開かれるジャズピアニスト、秋吉敏子さんのコンサートで使用される。同センターの地下倉庫に眠るピアノは静かに出番を待っている。
 内田さんが同市康生通南で経営していた病院内の「内田スタジオ」に楽器をそろえる際、秋吉さんが「どうせなら」と、グランドピアノを要望した。グランドピアノは黒塗りが主流だが、内田さんはスタジオの内装に合わせた木目調で発注した。
 発注と納品を担当したのは、内田さんと40年来の付き合いがあり、当時、ヤマハ名古屋店ピアノ係だった山東正彦さん(現・内田修ジャズコレクション主任専門員)。山東さんは「ピアノは内田さんを慕う数々のミュージシャンが弾いた」と振り返る。特に秋吉さんは頻繁に弾いていた1人だったという。
 平成5年、内田さんは病院を閉じ、名古屋へ移った。残った楽器や機材、レコードコレクション、録音テープは岡崎市に寄贈したが、楽器の中で内田さんは唯一、ピアノの行き先にこだわった。指名したのは、岐阜県笠原町(現・多治見市笠原町)で病院を経営する藤井修照さん。「安心して使ってもらえると信頼を寄せていたのでは」(山東さん)
 藤井さんは内田さんと同じ外科医。かつての内田さんと同じく自前のスタジオを持つ。内田さんとの出会いはヤマハジャズクラブの第7回コンサート。当時、ドラマーで出演した藤井さんは、内田さんのジャズに対する情熱に触れ、意気投合したという。
 藤井さんのもとにピアノが渡って約14年。「(仮称)岡崎市図書館交流プラザ」内に再現される内田スタジオに展示するため、今年2月、藤井さんのスタジオからピアノを搬出した。搬出前に訪れた山東さんが耳にしたのは「大事な物を預かる責任がやっと終わる。ほっとした」という藤井さんの言葉だった。
 久しぶりにピアノを目にした山東さんは「懐かしかった」と一言。「秋吉さんにこのピアノをどう弾いてもらえるのか。これほど楽しみなことはない」とも。
 シビックセンター所長補佐の小野鋼二さんは「秘蔵ではないので、秋吉さんだけでなく、多くのミュージシャンがこのピアノを使える仕組みを作りたい」と話している。

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